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2020年月6月9日 --- 蔓歌せら
#3 あまあまでふわふわ!

 私たちふたりは、甘くて可愛いものが好きだ。リボンが好き、フリルが好き、チョコが好き、マシュマロが好き、ケーキが好き。だから私たちはたまに、大人には内緒の秘密のスイーツビュッフェを開くのだ。

 私の部屋の方が少し広いので、いつもそこで開催される。テーブルを良い感じに配置して、棚の上とかも拭いて物を整理して、こっそりキッチンからお皿を持ち出して。お互いが買ってきた好きなお菓子やスイーツを乗せ、思い思いの場所に乗せる。

 始まるのは、日曜日のお昼から。お父さんとお母さんが仕事でいない時、私たち2人はお互いが思う最高に可愛い格好をして、あまあまなそれらを頬張る。この時が一番気合い入れてメイクをするし、元々くせ毛な髪も更に巻いて、ちょっとしたヘアメイクなんかもしちゃう。このあと外に出る予定もないのに。お互いのためだけに、最高の可愛いを作り上げる。これが私たち共通の趣味なのだ。

「ろこちゃん、メイク上手になったね!」
「ほんとお! わたしね、青みのピンクが好きだから、そういう色のアイシャドウとかチークとか、ちゃんと集めてみたんだよ~」
「すごいじゃん! 私もだけど、ろこちゃんもブルベだもんね~。今度私のメイク道具も使ってみる?」
「えっ使いたい! いいの?」
「いいよいいよ~~! むしろ今触っちゃってもいいんだよ?」
「え~! そしたらねえ……お姉ちゃんの涙袋とアイホールに沿うような線を引いてあるあるキラキラ……グリッターかな? それはどれ? すっごくかわいい!」
「ありがとう~~! これ初めてやったんだけど可愛いよね! 最近このメイク見掛けてさあ、ずっとやりたかったんだ! 私はねえ、え~~っと……これ! これ使ってるよ」
「やったあ! じゃあ~どこに置こうかなあ~……」
「今日のろこちゃんのメイクだったら~……涙袋に点置きでどうだ!」

 グリッターの蓋をくるくると回し、中身を刷毛につけてから彼女の涙袋の真ん中にそっと大きなラメを置いた。鏡を見た彼女は、そのラメ以上に大きな目を輝かせる。

「わあぁ……! 可愛い……!」
「でしょでしょ~! じゃあそれ、私他の色も持ってるから好きなのあげるよ!」
「え、いいの?」
「いいよいいよ~! ろこちゃんが選んでるあいだ、私は~~……あっこのパンナコッタ気になってたんだよね。これた~べよ!」
「うわぁあ……! どれも可愛いなあ……!」

 スイーツを食べながらメイクや服の話をする。私は友達はそれなりにいる方だけど、こんなにぴったり趣味が合うのはこの子しかいない。やっぱり私たちって姉妹なんだなあ、とスイーツと共に噛み締めた。

「じゃあぁあ~……ちょっと白っぽい……オーロラっぽいこれ!」
「お! いいチョイスするねえ~!」
「お姉ちゃんは結構いっぱい塗るから肌馴染みのいい色が良いかなあって思ったんだけど、私はさっきの点置きがすごく可愛かったから、ちょっとでも目立つこれにしようと、思って……!」
「さすがはろこちゃん! 的確なチョイスだね~」
「えへへえ~」

 にこにこと笑いながら、紅茶ケーキをぱくっと頬張る彼女。それ美味しいよね、わかるわかる。

「今日はねえ、近くのケーキ屋さんで食べたことがなかったケーキと、クレープ屋さんのちょっと豪華な……チョコブラウニーが入ってるクレープとか買ってきたの!」
「ね~~! 普段ろこが買わないものばっかだなあと思った!」
「そうでしょ~。 あとは、しょっぱいもの要員のポテチのり塩!」
「あはは、これだけめっちゃ異質って思ってた! 分かってるねえ~、これで永久機関だね……」

 お互い、学校があるし用事もあるしでなかなか休みが被ることもない中、今日のような日にはこんなパーティーをするのが、最高の楽しみなのだ。
こんなに幸せでいいのかな。良いんだろうな! だって、あまあまふわふわの、可愛い私たちだもん!

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